漢方
肩こりは東洋医学で治す! 整形外科医が漢方医になってわかったこと
肩こりに悩む人は非常に多いですが、その原因については正しく認識されていないようです。実際にその原因はさまざまですので、個々の原因に合った対策が必要です。さらには原因がひとつとは限らず、むしろ複数の原因が関与していることも少なくありません。 肩こりに関する本を検索してみましたが、西洋医学と東洋医学の両方の視点から総合的に整理して解説されたものは見当たりませんでした。そこで、本書では肩こりの原因を医学的に分類してそれぞれ解説していきます。重篤な疾患に伴う肩こりもあることを知っていただくことで、早期発見、早期治療につながればいいことは言うまでもありません。逆に言えば、それらの疾患の可能性を除外できれば、ひと安心できるとも言えます。一方で、「西洋医学的なチェックでは特に異常は見当たらないのに症状がある」という人は結構おられます。また、「薬を飲んでも改善しない」、「ブロック注射を受けても一時的に和らぐだけ」という人も少なくありません。私は元々は整形外科の医師で、外来診療においては肩こり、腰痛、膝痛なども多く診てきました。患者さんの症状が良くなっていくのを見るのは非常に嬉しいものでしたが、なかにはどんな方法を用いても症状が改善しない例もありました。一時的に症状が軽くなってもまた戻ってしまう例も決して少なくはなかったように思います。それらに対して、漢方の薬がよく効いた例の経験を重ね、また同時に内科疾患の症状も改善する例も経験していくうちに漢方に対する興味を深め、知れば知るほど漢方を含めた東洋医学が西洋医学とは全く違った切り口で人を部分ではなく全体で診ていることがわかり、これぞ自分が求めていたものだと思い、ついには漢方の専門医に転身した次第です。肩こりに対して、東洋医学ではその原因を分析して対処することが可能となります。整形外科などの西洋医学と漢方・鍼灸などの東洋医学の両方の観点からみることができる私だからこそ言えることをお伝えしていきます。本書では西洋医学的視点も踏まえつつも、主に東洋医学の視点から肩こりについて詳しく解説しました。 東洋医学では「心身一如」の観点から、心と身体は切っても切り離せない一つのものとして考えます。心と身体は互いに良い影響も悪い影響も与え合うので、心身両面を考慮した治療を重視します。その人の心の問題を解決しない限り、治りきらないこともあります。大半の肩こりにも人の感情・情緒や心の問題が関与しています。それを解決する鍵が東洋医学にはあるのです。 肩こりの原因は人それぞれ違うのです。本書を読みながら、あなたの肩こりの原因を探っていきましょう。そこからあなたに合った治すための解決法を見つけて実行していただければ、肩こり解消への道が開けてきます。そして、本書でぜひ東洋医学の考え方に触れてみてください。きっといろいろと思い当たる節があるところに出くわすと思います。そこで得られる「気づき」を忘れないでください。そこからすべては始まります。東洋医学的な養生法も、可能な範囲で無理なく取り入れてみてください。少しずつでも続けていけば、必ずといっていいほど、あなたの心身に変化が現れてきます。そうすることで、失いかけている心身の健康を取り戻しましょう。 私が本書で伝えたいことは、「肩こり」についての正しい知識とそれを治すための対策法を知っていただきたいことはもちろんですが、「肩こり」というひとつの症状への理解をきっかけとして、心身ともに楽になっていただきたいということです。また、そのことを通して東洋医学の良さを知っていただければ幸いです。第1章では、本書を書くに至った経緯とともに、本書を読むことによるメリットを述べております。第2章の前半では肩こりの実態と西洋医学的見地を述べ、第2章の後半で東洋医学の基礎知識についてまとめてみました。そして第3章で、東洋医学の視点から肩こり解消のための対策方法について述べております。本書の構成はじめに第一章 実は奥が深い肩こり1 私が整形外科医を辞めたワケ2 なぜ東洋医学なのか3 医学だけで人を治せるか?4 本書の目的5 本書を読むことであなたはどう変わるか第二章 肩こりの実態と東洋医学1 肩こりの歴史2 女性に多い肩こり3 西洋医学からみた肩こり4 東洋医学の整体観(そもそも東洋医学とは?)5 陰陽五行について6 気血津液と臓腑経絡7 病の原因としくみ(病因病機)8 東洋医学における診断と治療(弁証論治)9 現代人の悩みやストレスの状況10 どういう人が治りにくいのか?第三章 肩こりは東洋医学で治す!1 東洋医学からみた肩こり2 養生法とは3 呼吸・姿勢・運動について4 飲食と睡眠について5 肩こりを通して自分を知る 〜心身一如〜あとがき参考文献・書籍